肉の消費を減らし植物性タンパク質を増やすことが長寿の鍵に —ハーバード大学&シドニー大学研究

ハーバード大学とシドニー大学の研究チームが、動物性タンパク質が健康に及ぼす悪影響を示唆する別々の研究結果を発表しました。
いずれも、最も健康増進に役立つ食事を特定するため大規模に消費パターンを調査した結果、植物ベースのホールフードを豊富に取ることが死亡率を下げ、長寿につながると結論付けています。
食事パターンに基づいた健康状態を追跡
ハーバード公衆衛生大学院の研究では、米国で食生活がタバコに次いで2番目に大きな死亡リスク要因となっている事実に着目。10万人以上の米国人の中年期の食生活と最終的な健康状態について、30年間にわたるデータを調査しました。
研究者らは、8種類の食事パターン(いずれも果物と野菜、全粒穀物、不飽和脂肪酸、ナッツ類、豆類を多く摂取し、魚と特定の乳製品の摂取は少ないか中程度)をどれだけ守っているかで、参加者を採点。また、超加工食品(UPF)の消費量も調べています。
結果は、参加者のおよそ10分の1が健康的に年をとっており、8種類の食事パターンのいずれかを守っていることが認知・身体・精神面の健康向上につながっていました。その反面、加工肉や砂糖入り飲料、ダイエット飲料の摂取量が多いほど、健康を損なう可能性が高くなっています。
代表的な食事パターンは、慢性疾患の予防に重点を置いた「健康食指数(AHEX)」や「プラネタリーヘルスダイエット指数(PHDI)」に基づいたものでしたが、前者を実践した参加者は、70歳時点で86%、75歳時点では50%以上の確率で健康的に年を重ねることができていました。
共著者の一人Marta Guasch-Ferréは、「植物性食品が豊富で、健康的な動物性食品を適度に取り入れた食事パターンが、全体的に健康的な高齢化を促進し、また将来の食事ガイドラインの策定に役立つ可能性があると示された」と語りました。
米国では、今年末に改訂を控えている食生活ガイドラインの中で植物性タンパク質を優先し赤肉を減らす内容を盛り込むよう、科学者が米国農務省(USDA)に対して勧告しています。
同大学の研究者らは昨年にも、植物性タンパク質の比率を高くすれば心臓の健康が改善されるとの報告を実施。今年3月には、大さじ1杯以下のバターを植物性油脂に置き換えることで、がんなどによる早死にリスクを17%低下させられると発表していました。
タンパク質摂取と平均余命の関係を調査
シドニー大学チャールズ・パーキンス・センター(Charles Perkins Centre)の専門家チームは、およそ60年にわたる101カ国の人口統計学的データと食料供給データに対する評価を行いました。
対象国には、米国、豪州、スウェーデン、アルゼンチンのように肉の消費量が多い地域と、パキスタンやインドネシアのように植物性食品がより身近な地域の両方が含まれています。
各国をそのままでは比較できないため、研究チームは所得と人口規模を考慮してデータを補正。その結果、植物性タンパク質を入手しやすい国の方が、動物性タンパク質の入手が容易な国に比べて平均余命が長いと判明しました。
5歳未満の子供では、肉、乳製品、卵をより多く容易に摂取できることが死亡率の低下と関連しており、子供にとってはあらゆるタンパク源からのエネルギー補給が有益とのこと。とはいえ、「栄養不良の環境において植物性タンパク質を取り入れるメリットを否定するものではない」と著者らは強調しています。
この研究は、「死亡率の低下と相関するタンパク質および脂肪の動物性・植物性のバランスは、年齢により異なる」と結論。「健康と環境保全のバランスをとるためには、特に動物性タンパク質を年齢に応じて減少させるよう管理するべきだ」と述べています。
参考記事:More Plants, Less Meat Key to Longer Lives, Show Major Harvard & Sydney U. Studies
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