代替油脂開発のMelt&Marbleが約13.4億円を調達、2026年にパーソナルケア分野で展開開始へ

スウェーデンのバイオテクノロジー企業Melt&Marbleが、精密発酵技術を用いて作られた「デザイナー」脂肪の生産拡大と初の市場投入に向け、シリーズAラウンドで8,000万スウェーデン・クローナ(約13億4,000万円)を調達したと発表しました。

味や健康面でも優れた持続可能な代替脂肪


このラウンドはスウェーデンのディープテック投資家Industrifondenが主導し、欧州委員会のEIC Fund、化粧品大手のBeiersdorf、乳業大手のValio、Chalmers Ventures、Catalyze Capitalが参加しました。

Melt&Marbleは、昨年にも欧州イノベーション会議(EIC)のアクセラレータープログラムから助成金を得ており、過去1年間で1,000万ユーロ(約18億2,000万円)近い資金を確保しています。

同社の原料は、代替肉・乳製品、チョコレート菓子、ベーカリー製品、特殊栄養食品、パーソナルケア、美容などの用途において、従来の油脂に代わって高い機能性を発揮。食品においては食感や口当たりを向上させ、化粧品においては肌触りや生物活性の強化が図れます。

酵母の細胞を工場として活用し、糖を油脂へと変換するよう誘導する精密発酵の技術により分子レベルから脂肪を設計することで、コスト競争力のある原料のローカル生産が可能に。

パーム油、ココナッツ油、動物性油脂などの従来品が、不安定な供給や環境破壊に関連した問題を抱えていると糾弾される中、味や健康面でも優れた持続可能な代替品の安定供給を確保するものとなります。

来年パーソナルケア分野での市場化を狙う


Melt&Marbleは、従来の食品用途に加えて、パーソナルケア製品向けに「Marble7」を開発しました。これはヒトの皮膚に存在する皮脂と類似した脂肪酸組成を持つ、生理活性脂質。常温では固体ですが、肌に触れると溶けて持続的な保湿効果をもたらし、皮膚バリア機能の強化、水分保持、弾力性の向上を促進します。

新たな資金調達により同社は、デモスケールから市場投入に向けた準備段階へと移行する見込み。生産は欧州における既存の商業生産パートナーを通じて行われ、設備投資の負担を少なく抑えてのスケールアップを目指します。

CEOのAnastasia Krivoruchkoは、「今後1年で特定のプレミアム特殊油脂と競争力のある価格を実現させ、中期的には特殊油脂カテゴリー全体でのコスト競争力拡大を目指す」とコメント。「当社製品ならではの機能性が最大の価値を提供できる市場に参入しつつ、規模拡大によるコスト削減を進めたい」と述べました。

同社はまず欧州市場に注力しているものの、規制面でより迅速な展開が期待される米国の食品市場への参入も準備中。商業提携と流通に関する協議を進めつつ、同社に投資を行ったBeiersdorfValioをパートナーとして、製品の共同開発に取り組んでいます。

パーソナルケア分野では、欧州その他の地域で原料を市場化するために必要な登録を実施済みで、来年の発売に向けた準備が整っているとのこと。食品分野向けには現在、米国でGRAS(一般に安全と認められる)ステータスの取得プロセスが進行中です。

参考記事:
Swedish BioTech company Melt&Marble secures €7 millon to scale designer fats in beauty and food | EU-Startups
Melt&Marble Secures €7.3M to Scale Designer Fats Made Using Precision Fermentation
Melt&Marble Raises $8.5M to Launch Animal-Free Fats for Food & Personal Care
Melt&Marble lands US$7.7 million to scale designer fats for beauty and food markets | PPTI News

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