オランダの培養肉スタートアップMeatable、資金調達難で事業停止が決定
ロンドン証券取引所に上場する投資会社のAgronomicsがプレスリリースで、同社のポートフォリオに含まれるオランダの培養肉スタートアップMeatableが継続的な資金調達に失敗したため清算手続きに入ると明かしました。
先日事業停止が報道されたイスラエルのBeliever Meatsに続き、培養肉業界の主要プレーヤーが突然の閉鎖に追い込まれています。
創業8年近くの歴史に幕
この決定は、Meatableが2025年を通じて複数の経営・財務上の課題に直面していた状況を受けてなされました。積極的な事業展開を進めた努力も実らず、既存株主からも新規投資家からも十分な資金調達を実現できなかったといいます。
細胞農業への投資を専門とするAgronomicsは、これまでに同社の純資産総額の約8％を占める790万ポンド（約16億6,000万円）をMeatableに投資。現在のMeatableの帳簿価額は1,190万ポンド（約25億1,000万円）となっていましたが、これをゼロに減損処理すると明かしました。
会長を務めるJim Mellonは、「今回の結果は残念ではあるが、この決定がすべてのステークホルダーの利益にかなうものと判断した。当社は引き続きポートフォリオを積極的に管理し、長期的に見て大きな成長ポテンシャルを有する幅広い事業の支援に注力していく」とコメントしています。
業界最速の連続生産プロセスを構築
2018年にKrijn de Nood、Daan Luining、Mark Kotterによって設立されたMeatableは、培養の元に多能性幹細胞（PSC）を活用。人為的な転換が必要な不死化細胞株とは異なり、多能性幹細胞は急速に増殖し続ける能力を自然に持っています。
これを灌流培養と組み合わせることで極めて高い細胞密度を生み出す連続生産を実現し、わずか4日間で完全に分化した筋細胞と脂肪細胞を作り出すという、培養肉業界で最速の細胞分化プロセスを確立しました。
2年前にオランダ・ライデンに開設したパイロット施設には200リットルのバイオリアクターを保有しており、シンガポールのESCO Aster（培養肉生産で認可を受けた世界初の受託製造施設）とも提携して生産能力を向上。
昨年には、欧州連合（EU）域内で初めてとなる一般向け試食イベントを開催したほか、前述した技術でTIME誌の「2024年の最も優れた発明」にも選ばれています。
調達難にかかわらず、今年に入っても同社は複数の進展を見せていました。培養レザーの開発に向けてPelagenとの提携を行い、シンガポールでは培養肉の大型工場建設を目的としたTruMeatとの合弁事業を開始しています。
直近では、肺疾患をターゲットに治療薬事業へと転換したUncommon Bioの培養肉プラットフォームを買収していました。
積極的な取り組みも、投資獲得につながらず
これまでにMeatableは投資家から9,500万ドル（約150億円）を調達しており、CEOのJeff Tripicianによると、今年中にシリーズCラウンドで約3,500万ドル（約55億1,000万円）の獲得を目指していました。
しかしながら、培養肉分野への資金流入はここ数年停滞が続き、2025年1～9月期に培養肉スタートアップが調達した資金総額はわずかに3,600万ドル（約56億7,000万円）。2023年の2億2,590万ドル（約356億円）、2024年の1億3,900万ドル（約219億円）から大きく減少しています。
長期に及び、かつ高額なプロセスともなる規制当局の承認なしには収益を生み出せない上、コストと拡張性の課題を克服するのに多額の資本が必要なこの分野において、投資家の関心の欠如は多くの企業にとって痛手となっています。
Believer Meatsは米国でようやく販売が可能になり、世界最大の培養肉工場を開設した数カ月後に閉鎖が決定。英国拠点のCellRevも今年撤退を発表し、オランダのUpstream Foodsも同様に事業停止に至りました。
参考記事：
Meatable Enters Liquidation Following Investor Withdrawal
Dutch Cultivated Meat Startup Meatable Shuts Down Amid Fundraising Struggles
More grim news in cultivated meat sector as Meatable folds: ‘We are now entering the second phase of this industry’
Meatable shuts down after funding efforts fall short | PPTI News
この記事へのコメントはありません。