ドイツの培養肉企業MyriaMeat、ノロジカに由来する多能性幹細胞株の樹立に成功

ドイツ・ミュンヘンに拠点を置く培養肉スタートアップMyriaMeatが、ノロジカに由来する多能性幹細胞株の樹立に成功し、培養肉製品のポートフォリオを拡大しました。

無限に増殖できるiPS細胞を活用


MyriaMeatは、特許取得済みの分化プロトコルを用いて、ノロジカの筋細胞に成長する人工多能性幹細胞(iPSC)株を樹立することに成功。これまでに手掛けていた和牛と豚肉から開発の取り組みを拡大し、培養鹿肉フィレを実現するための基盤を築きました。

CEOのFlorian Hüttnerは、「細胞培養によるノロジカ肉は、もはや単なるビジョンではなく、私たちの次の目標だ」と述べています。

2022年にゲッティンゲン大学のスピンオフ企業として設立されたMyriaMeatは、25年にわたる大学研究と、創業メンバーの医療分野における特許技術を基盤としています。

培養肉の生産において、同社はiPS細胞を活用。通常の細胞株を樹立する際には、無限に増殖できるよう遺伝子操作を施して細胞を「不死化」させる必要がありますが、iPS細胞は初めから急速かつ際限なく増殖する能力を持っています。この特性により、機能的な筋組織や肉塊全体を培養できるようになります。

また、細胞は通常、構造化された肉塊が作られるよう、細胞の付着と分化を促進する足場上で培養されます。一方、iPS細胞は自己組織化する特性があるため、高価な足場材が不要。培養タンクの中で生体組織の構造を再現し、さまざまな組織の特性を模倣することが可能です。

MyriaMeatの技術は、動物に無害な1度の生検により得られたサンプルから、安定した幹細胞培養を実現。鹿肉の中でも価値の高い高級品とされるノロジカをターゲットにすることで、競争力のある価格を早期に達成し、より幅広い消費者層を取り込む狙いがあります。

政府の後押しを受けて技術開発を進める


MyriaMeatは、欧州の培養肉業界において最も資金力のあるスタートアップ企業の一つであり、2023年に行われた資金調達ラウンドでは4,300万ユーロ(約79億8,000万円)もの額を集めました。

同社のプラットフォームの中で最も開発が進んでいるのは豚肉。植物由来の原料とも混合せず、非遺伝子組み換えのブタ細胞のみで作られた培養フィレを2024年に発表しました。昨年には、同社のブタ筋細胞が、動物体内の筋肉の機能と同様に自発的な収縮を示すことを確認しています。

また、欧州地域開発基金(ERDF)とニーダーザクセン州から資金提供を受けて、ドイツの食肉メーカーHans Kupfer & Sohnとの共同プロジェクトも実施。従来の豚肉に20%の培養豚肉をブレンドしたソーセージの開発に取り組んでいます。

世論調査では、ドイツ人の47%が培養肉を試してみたいと考えており、3人に2人は、もし市場に出回るなら、経済効果を高めるためにも地元で生産されるべきだと回答。政府がこの分野の発展を促進して、代替プロテインがもたらす機会を生かせるよう農家を支援すべきと考えている人も、47%に上ります。

ドイツ政府は、2024年度の連邦予算で培養肉を含む代替プロテインの振興に3,800万ユーロ(約70億5,000万円)計上するなどの支援策を打ち出してきました。

つい先日には、国家戦略「ハイテク・アジェンダ・ドイツ」の一環としてバイオテクノロジー・ロードマップを発表し、2027年に培養肉と精密発酵食品のイノベーションハブ設立を目標に掲げています。

参考記事:
MyriaMeat Cultivates Roe Deer Muscle Cells, Extending Its iPSC Platform Beyond Pork
MyriaMeat Extends Cultivated Meat Platform to Produce Venison from Roe Deer Cells

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