セルロース製の足場で、培養肉生産にかかる成長因子のコストを10分の1に削減 —エルサレム・ヘブライ大学

エルサレム・ヘブライ大学の研究チームが、培養肉生産に必要な成長因子を最大90%削減しつつ、ステーキのような分厚い組織構造の発達を促進する、セルロースベースの足場を開発しました。

ホールカットの培養肉に必要な組織化を実現


学術誌『Current Research in Food Science』に掲載された査読済みの研究は、培養肉業界が直面する最も大きな経済的障壁の一つである成長因子のコストに焦点を当てたものです。

培養される動物細胞の増殖と分化を促進する成長因子は、培養肉生産における培地コストの95%以上を占める場合も。そのため、培養肉の商業化を目指す企業や研究者にとっては、成長因子の使用量削減が重要な課題となっています。

エルサレム・ヘブライ大学のチームは、成長因子を培地に継続的に添加するのではなく、植物由来で可食性のセルロース足場に直接結合させる方法を開発。この手法により、ウシの細胞が増殖と分化に必要な生物学的シグナルを即座に受け取ることができ、必要な成長因子の総量の大幅な削減に成功しました。

足場自体は、ナノ結晶および微結晶セルロースの誘導体を組み合わせ、指向性凍結(directional freezing)技術を用いて作製されたもので、動物の筋組織に見られる細胞外マトリックスに似た、整列したトンネル状の構造を形成。

ウシ間葉系幹細胞をこの足場に播種したところ、細胞の強力な接着、長期的な生存、そしてセルロース繊維に沿った整列が見られました。

この指向性が、細胞を天然の筋組織と同様の方法で組織化する上で重要な役割を果たし、業界で最も技術的に困難な目標の一つとなっているホールカット(ステーキのように厚みのある)培養肉製品の実現に寄与するものと期待されます。

足場は物理的な支持体として機能するだけでなく、細胞の発達にも積極的に影響を与えている様子。数週間の培養期間中、細胞は筋組織へと分化し、チチンなどの筋肉に関連するタンパク質や、細胞質内脂質を蓄積しました。

研究チームは、この発達によって構造体の物理的特性が変化し、剛性と圧縮強度が生のサーロインに匹敵するレベルまで向上したと報告しています。

培養肉生産の経済性を大幅に向上


研究チームはまた、上記の方法で培養した組織が、調理に対してどのように反応するかについても評価を行いました。

フライパンで焼く試験では、培養組織はその構造を維持し、メイラード反応により通常の加熱調理と同様の風味と外観に変化したとのこと。

調理後に実施した機械的試験では、従来の食肉の場合と部分的に類似した繊維状の食感と、圧縮に対する抵抗を示しました。

論文の責任著者に挙げられているSharon Schlesingerは、「組織の品質を損なわずに、細胞農業の経済性を根本的に変えられることを示す結果が得られた」とコメント。「これにより資源の無駄を桁違いに減らせ、工業的な食肉生産ではない、スケーラブルで商業的に実現し得る代替手段の確立に大きく近づける」としています。

セルロースは、農産物原料から豊富に入手可能で安価、かつ食品に使用しても安全なため、培養肉の足場材として注目を集めています。ほかの素材とは異なり、セルロースベースの構造体は、既存の製造技術を用いて大規模に生産できる可能性も。

今回の研究は、商業規模を意図していない概念実証に過ぎなかったものの、今後の規模拡大に向けた基盤が築かれました。今後は、このプロセスを血清を一切用いない培養システムに適用することと、商業化を見据えた大規模生産での評価に重点を置く予定です。

参考記事:
Budget-Friendly Lab-Grown Steak with Realistic Texture Cooked Up at Hebrew U – The Canadian Friends of Hebrew University
Hebrew University develops low-cost cellulose scaffold that cuts cultivated meat growth factor use by 90% | PPTI News

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