米Orbillion Bio、低リスクで培養肉生産のスケールアップが可能なプラットフォームを開発し追加調達を完了

米国・カリフォルニアに拠点を置く培養肉メーカーのOrbillion Bioが、追加資金の調達を完了したと発表(調達額は非公開)。業界全体で投資の落ち込みが見られる状況の中、投資家からの理解を得ることに成功しています。

200リットルへのスケールアップに成功


The Venture CollectiveとAt One Venturesが共同でリードインベスターを務めた今回の資金調達ラウンドにより、Orbillion Bioの累計調達額は1,500万ドル(約22億4,000万円)に達しました。

この資金により生産規模を拡大させ、培養牛肉のさらなる技術開発を行い、規制当局への対応を進めます。

同社は昨年9月に200リットルへの生産スケールアップに成功。シリーズAラウンドを迎える前の企業が達成した生産量としては最大という規模を達成し、年間400万ポンド(約1,800トン)を超える培養肉生産が可能になっています。

コストと時間を削減するアルゴリズムを開発


Patricia BubnerGabriel Levesque-TremblaySamet Yildirimが2020年に設立したOrbillion Bioは、収益性確保のためキロ単価の高い高級肉に焦点を当て、和牛細胞を培養する技術開発を実施。

「哺乳類細胞の培養を2Dから3D環境へ比類のないスピードでスケールアップさせる主要培地とバイオプロセスのパラメータを、確実にシミュレートする予測モデリングプラットフォーム」という、低コスト生産が可能なアルゴリズムを開発しました。

同社によると、ラボスケールの2次元培養からバイオリアクターを用いた3次元培養(懸濁培養)への移行は、培地、バイオプロセス、細胞がどのように調和して機能するかの理解が不十分なため失敗に終わるケースが多く、これを理解するためにはコストと時間のかかる試験を繰り返す必要があるとのこと。

しかし、同社のプラットフォームを活用すれば、2次元で培養していた細胞の3次元環境下での挙動を予測することで効率化でき、多くの企業が丸1年かかることをわずか数週間で達成できるといいます。

ハイブリッド肉開発に向け提携を強化


Orbillion Bioはまた、資産を軽量化するアセットライト戦略を採っており、資本集約的な特注設備の導入を避け、既存のインフラで規模拡大を目指しています。このアプローチを推し進めるため、2022年にバイオ製品・技術の開発を行うスタートアップ企業Solar Biotechと提携しました。

同年には、高級食肉を扱うオランダのLuiten Foodとも提携し、外食産業、専門小売店、精肉店などにまたがる1,200の流通拠点へのアクセスを確保。2024年はさらに多くの企業との提携を予定しているといいます。

現在、培養肉開発を進める多くの企業にとって市場参入への現実的な道となっているのが、動物細胞の培養物と植物由来の原料を組み合わせてハイブリッド肉を作ること。

Orbillion Bioも、GOOD MeatAleph FarmsMeatableなどと同じくこのアプローチを採用。培養肉と植物性原料を配合したひき肉製品に焦点を当てています。

技術革新に後戻りはない


昨年培養肉の販売が解禁された米国では、既存の食肉業界からの反発も強まっており、複数の州でこれを禁止しようとする議員が出現。フロリダ州では今月、上下両院で法案が可決され、間もなくRon DeSantis州知事が署名して成立する見通しです。

この動きは、培養肉企業だけでなく、食肉業界の内部からも反発を受けており、北米食肉協会(NAMI)はDeSantisに宛てたレターの中で「消費者の選択肢を狭める悪政」と一蹴しています。

Orbillion BioのCEOを務めるBubnerは、「新しいテクノロジーというものは、一度発明されると元の状態に戻すことはできない」とコメント。

一時は大きな議論を呼んだインスリン生産を引き合いに出し、「インスリンはかつて牛や豚から採取されていたが、科学者たちが微生物の発酵(精密発酵)により生合成する方法を発見した。一時は賛否両論あったが、今ではもうそれがなかった時代には戻れない」と指摘しました。

また、「培養肉を禁止したところで、気候変動がフードシステムに与える影響や、他国が食料主権を獲得する必要性がなくなるわけではない。土地や動物に依存せず、集約化された畜産業のマイナス面なしに食料を得られる培養肉生産は、未来の世代に築いてもらうべき技術だ」とも語っています。

参考記事:
Orbillion Bio Secures Funding & Reaches Scaling Milestone for Cultivated Beef Production
Brief: Orbillion raises new capital for predictive modeling platform to de-risk cultivated meat scaleup

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