MycoWorksの菌糸体レザー、キャデラックのコンセプトEV「SOLLEI(ソレイ)」の内装に採用

バイオマテリアルの開発・製造を手掛ける米国のスタートアップ企業MycoWorksと自動車大手のゼネラルモーターズ(以下、GM)が、プラスチックやレザーに代わる菌糸体ベースの素材を取り入れたコンセプトカーを発表しました。

菌糸体素材の可能性を示す


GMが展開する高級車ブランド、キャデラックから発表された最新のコンセプトEV「SOLLEI(ソレイ)」は、「再生可能な自動車資源を開拓する」というキャデラックの使命を反映したもの。

コンソールの充電マットとドアポケットに、光沢を持たせたMycoWorksの独自素材「Fine Mycelium」を採用し、サステナブルな自動車デザインにおける菌糸体素材の多用途性をアピールしています。

Fine Myceliumは、菌糸体(キノコの根の部分)を発酵・増殖させて作られる素材。リサイクルされたおがくず、石灰石、小麦ふすまなどを栄養分に菌を育て、収穫した後は動物皮革と同様のなめし処理を行って仕上げます。

MycoWorksは2020年に主力素材の「Reishi」を発表していますが、今回使われる素材は菌糸の成育、再なめし、仕上げの工程で異なっているといい、具体的な特性は明かされていません。

成育条件を細かく制御することで素材の特性を微調整でき、カスタマイズされた仕様にも対応が可能。

今回のEVは展示目的で製作されたコンセプトカーのため、MycoWorksにとっての収益源にはなりませんが、CEOのMatt Scullinは「新素材の用途として将来的な可能性を示すものだ」とコメントしています。

ハイブランドも関心を寄せる代替レザー


MycoWorksは代替素材業界の革命的児な存在でありながら、科学者やエンジニアではない二人のアーティスト、Phil RossSophia Wangにより2013年に設立された、異色の企業。

菌糸を育てて作り出した革新的な素材は、最高級の動物性皮革のような強度、耐久性、手触りを持ちながら、環境への負荷が著しく低い代替品となります。

霊芝ganoderma lucidum)という菌糸体を用いた初の製品「Reishi」の発表以来、帽子メーカーのニック・フーケ、エルメス、家具メーカーのリーン・ロゼといった高級ブランドとの提携を実現させてきました。

GMとは、自動車の内装に合わせた菌糸体素材の共同開発を進めるため、2022年に提携を発表。その後、今回が初の実用化例となります。

現在までに1億8,700万ドル(約282億円)を調達しており、昨年には世界初となる菌糸体の大規模生産工場を、米国・サウスカロライナ州に開設しています。

参考:ハイブランドも関心を寄せるマッシュルームレザー、米MycoWorksの開発ストーリー

環境負荷の極めて大きいレザー製造


レザー製造は、エネルギーと水を大量に消費するため環境負荷が大きく、森林伐採と生物多様性の喪失につながっていることが問題視されてきました。

加えて、なめし工程で毛や皮脂を除去するために使われる硫酸クロムが、排水規制の緩いインドやバングラデシュなどではそのまま下水に流され、地域住民の皮膚炎や呼吸器系疾患、新生児のチアノーゼ(血中酸素不足で皮膚が青みがかる病気)などを引き起こしているとされています。

従来のレザーの代替品としては合成皮革が最も流通していますが、合成皮革にはプラスチックが含まれており、分解されるまでに数百年単位の長い時間が必要。

海洋を汚染するマイクロプラスチックの問題もあって環境により良い代替品が求められており、植物由来の原料を使ったバイオレザーが近年注目を集めています。

キノコから作られた代替レザーを使用した自動車は、今回が2例目。メルセデス・ベンツが2022年に発表したコンセプトEV「Vision EQXX」には、マッシュルームレザーとサボテンレザー、竹繊維、AMSilkの開発した精密発酵シルクが使用されていました。

参考記事:
MycoWorks and GM Unveil Cadillac EV SOLLEI, the First Car with Mycelium Leather Interior
GM Unveils ‘SOLLEI’ Concept Car Featuring MycoWorks’ Mycelium-Based Materials
Cadillac Releases Sollei Concept EV with Interiors Featuring MycoWorks’ Mycelium Biomaterials

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