英国政府が3億円超を拠出し、培養肉の認可を早める規制の「サンドボックス」を創設

EU離脱から5年近くが経過し、培養肉を食卓に並べるための取り組みを急速に強化している英国政府が、食品基準庁(以下、FSA)に160万ポンド(約3億1,200万円)を交付。

認可プロセスを迅速化する目的で、欧州では培養肉関連で初となる規制のサンドボックス(新技術を実証するため、現行規制が適用されない例外を設ける制度)を創設しました。

制度設計で投資家の注目を集める狙い


この制度は来年2月に開始し、FSAとスコットランド食品基準庁(FSS)の共同で2年間運用される予定。

培養肉関連の技術に関する「厳密な科学的証拠」を収集し、安全性を実証するより良い指針を提供するとともに、スタートアップ企業の認可申請に対してサポートを行い、認可スケジュールを短縮する狙いです。

また、現在1製品あたり35万~50万ポンド(約6,800〜9,700万円)かかっている申請コストを削減する一方、スタートアップ企業が生産能力を拡大するために必要な投資を呼び込めるような環境づくりを目的としています。

FSAはさらに、他国において承認された培養肉製品に英国でも認可を与えるシステムの構築も計画しているとのこと。新たに誕生したスターマー政権の支持をまだ得られてはいないものの、FSAは国際的な規制ネットワークの設立に、今回獲得した資金の一部を充当する予定です。

これと並行して、政府は当局の事務手続きの負担を軽減し、新技術への一般のアクセスを加速させるため、運輸省(DfT)、保健省(DHSC)、環境・食料・農村地域省(Defra)と連携する規制改革推進室を新設しました。

英国の代替プロテイン協会(APA)で会長を務めるJeremy Collerは、「700億ポンドと予測される欧州の培養肉市場において、英国は先頭を走る可能性を秘めているが、投資家の注目を集めるためには開かれたビジネス環境が不可欠だ。サンドボックスの創設は、成長する英国のビジネスにとって素晴らしい前進となる」と語っています。

規制枠組みを「近代化」する改革を予定


FSAは、2月にサンドボックスの設置計画を初めて発表。2023年の調査で、新規食品規制の迅速化が、英国のCO₂排出削減計画の達成に役立つと結論付けられたのを受けてのことでした。

英国では10月10日現在、5社が規制当局の認可申請を完了。認可を受けたのはペットフードをターゲットとするMeatlyのみで、Ivy Farm Technologies(牛肉)、イスラエルのAleph Farms(本国で培養牛肉の認可を取得済み)、フランスのVital Meat(鶏肉)とGourmey(フォアグラ)が認可待ちの状況です。

FSAは今後2年間で少なくとも15の申請があると見込んでおり、サンドボックス創設に伴いさらに多くの申請が行われる可能性もあると予測しています。

こうした動きは、規制の枠組みを「近代化」しようとする英国政府の取り組みの一環です。FSAは来年、法定文書を必要とする既存の制度に代わる新たな公開登録リストの作成や、10年ごとに必要な更新手続きの撤廃を含む制度改革を予定

法定文書の発布要件は、約2年半かかる申請手続きに加えて最大6カ月を必要とするため、認可遅れの一因となっていました。また、認可の更新についても現在FSAの手元にある案件数の22%を占め、今後2年間でも300件の期限切れが発生することから、この撤廃により大幅な人的リソースの解放が見込まれます。

これらの改革案については先月、新政府の閣僚からも同意を得ている様子で、実行にあたっての優先順位の決定を進めている最中です。

参考記事:
Groundbreaking sandbox programme for cell-cultivated products announced | Food Standards Agency
UK Government Pumps £1.6M, Opens New Regulatory Office in Milestone Move for Cultivated Meat

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