Standing Ovationとベル・グループ、ホエイ残渣を用いたカゼインの大規模生産に成功

フランスのバイオテクノロジー企業Standing Ovationと乳業大手ベル・グループ(Bel Group)が共同で、ホエイ残渣を用いた工業規模でのカゼイン生産に成功したと発表しました。

廃棄物の削減と食料主権の強化に寄与


精密発酵技術を活用したこのプロセスは、乳業界にとって重要な進展であり、よりサステナブルな循環型のアプローチによる乳製品生産の可能性を示しています。

Standing Ovationの特許技術は、チーズ製造の副産物である酸性乳清(動物飼料などに利用されるが、約半分は廃棄物として処分されている)を、さまざまな食品に使用される高品質なカゼインタンパク質へと変換するものです。

両社は今年4月に協働を発表していましたが、一連の最適化を経て今回の工業規模生産に成功。乳業分野において同じプロセスを広範に応用できる可能性を実証しました。

この進歩は、農業・食品産業における循環型経済の構築に向けた取り組みとして重要。副産物を再利用することで廃棄物を削減するだけでなく、国内資源を活用して食料主権の強化にも寄与できます。

循環型モデルを業界全体に展開へ


このカゼイン生産技術は、ISO 14040および14044に準拠したライフサイクルアセスメント(LCA)の結果、従来型の動物由来カゼインと比較してCO₂排出量を74%、土地利用を99%、水消費量を68%削減できると判明しました。

排出に大きな責任を負う乳製品メーカーとしてカーボンニュートラルとサステナビリティの目標を追求しているベル・グループは、この技術が潜在的な解決策になると期待。

同社はまた、「食べられる製品の廃棄を根絶し、廃棄が避けられない場合には食品廃棄物の100%回収を実現する」という長期的な見通しも掲げています。

微生物学者のRomain Chayotによって2020年に設立されたStanding Ovationは、2026年にも米国市場に精密発酵カゼインを投入する計画で、フランス政府などからの支援を受けて規模拡大を実施してきました。

今後、ベル・グループ以外の乳製品メーカーとも協力して、同じ循環型の生産モデルを業界全体に展開する意向です。

CEOのYvan Chardonnensは、「この世界初の成果は、栄養・経済・環境面で大きな価値を生み出しており、産業が根本的に変革され得ることを証明している。副産物の価値向上プロセスを通じて、より強靭で持続可能、かつ自立した酪農セクターの構築に貢献していきたい」とコメントしています。

参考記事:
Standing Ovation and Bel scale up industrial production of milk proteins from dairy co-products — a circular revolution for the food industry – Group Bel
Standing Ovation and Bel Group Achieve Milestone with Industrial-Scale Production of Caseins from Whey
Standing Ovation and Bel validate world-first industrial production of precision-fermented casein from cheese whey | PPTI News
Bel makes casein from whey: precision fermentation by Standing Ovation

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