細胞培養母乳の生産拡大を目指すNūmiが、フランス政府から約6.7億円の助成金を獲得

細胞培養による母乳の開発を手掛けるフランス・パリのスタートアップ企業Nūmiが、フランス政府の研究開発助成プログラム「i-Démo 5」の助成対象に選出され、株式の希薄化を伴わない資金として370万ユーロ(約6億7,300万円)を確保しました。
産業化に向けた準備を進める
フランスの「i-Démo」制度は、「France 2030」計画の一環で行われ、研究の初期段階から技術開発や量産化に至るまで、企業のイノベーションサイクル全体を通じた進展を支援することを目的としています。
支援の対象となるのは「エネルギー、環境、デジタルの各分野における転換に貢献しつつ、フランス経済に価値と競争力をもたらす」企業とされ、Nūmiは今回のプロジェクト公募の助成対象に選ばれました。資金の拠出は、フランスの国営投資銀行であるBpifranceを通じて行われます。
Nūmiの共同創業者でCEOを務めるEden Banon-Lagrangeは、今回の選出について、「過去3年間にわたり当社のチームが構築してきたもの、すなわちヒトの母乳に含まれる極めてユニークな生物活性成分を生産するために乳腺細胞を利用する新たなバイオ製造プラットフォームが、高く評価された証だ」とコメント。
「資金調達によって、バイオプロセスのスケールアップから、生物活性物質の開発推進、そして産業化に向けた準備に至る取り組みを加速させていきたい」と述べています。
Nūmiは、『Wired』誌による2026年版の「欧州で最も注目すべきスタートアップ100社」に選出されたほか、PeakBridgeとPariSanté Campusが主催するコンペ「Shaping the Future of Health and Nutrition」でも優勝。
これらの成果を受けて、数カ月前に欧州イノベーション会議(EIC)のアクセラレーター・プログラムからも250万ユーロ(約4億5,500万円)の助成金を獲得しました。
母乳に含まれる全成分の再現へ
2023年に設立されたNūmiは、病院や母乳バンクとの提携を通じて乳腺細胞を調達し、温度と湿度を管理した環境下でそれらを分離・培養。
細胞に必須栄養素を供給すると、体内でホルモンの一種プロラクチンが果たす役割と同様に、母乳生産の開始が促されます。得られた液体は、膜処理やクロマトグラフィーなどを含む多段階のプロセスで精製して仕上げます。
今年初めに50リットル規模のバイオリアクターへと生産を拡大した同社が目指しているのは、母乳に含まれる約1,500種類の成分を可能な限り再現すること。これには、身体の免疫力を高める上で不可欠な役割を果たすラクトフェリン、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)、抗体といった成分が含まれます。
同社はまた、母乳に含まれるタンパク質や脂肪酸が満腹感を調整し、糖尿病などの発症リスクを低減させる可能性があることや、高濃度のタウリン、DHA、APAが脳や神経の最適な発達を促進することを指摘しました。
こうした効果が認められる一方で、生理学的に母乳育児が不可能な女性が約5〜10%いるとされ、牛乳アレルギーを持つ乳児も約2〜3%存在。世界的に見て、乳児の大半は成長の過程で何らかの形で粉ミルクを与えられますが、既存の粉ミルク製品は生物活性物質が不足しており、栄養面で母乳に及びません。
Nūmiは自社の培養ミルクを、消化管感染症や小児肥満との関連が指摘されている従来の粉ミルクに代わるより優れた選択肢として位置付けています。
参考記事:
Eden Banon-Lagrange | LinkedIn
French Govt Invests €3.7M in Nūmi to Scale Up Cell-Cultured Breast Milk


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