アミガサタケの菌糸体を用いた初のジャーキー、CellXがGRASを取得し米国で発売

中国発のフードテック企業CellXが、世界初というアミガサタケ菌糸体の安全性を確認し、新たに立ち上げた消費者向けブランド「Mourish」からタンパク質を豊富に含んだジャーキーを発売しました。
米国でGRAS自己認証を完了
CellXは、独立した科学的評価に基づいて製品の安全性を確認する米国独自のGRAS(Generally Recognized as Safe:一般に安全と認められる)制度に基づき、アミガサタケの生み出す成分について自己認証を実施。
米国食品医薬品局(FDA)の定める要件に従い自己認証を行ったことで、米国内での販売が解禁されました。
ただし、トランプ政権下で新たに保健福祉長官に就任したロバート・ケネディ・ジュニアはこの制度を「抜け穴」と呼んで、FDAに廃止の検討を要請しており、今後は改めてFDAへの通知と正式な認可が必要となる可能性も。
CellXの共同創業者でCEOを務めるZiliang Yangは、変更の可能性について「残念なことだが、実際に変更が有効となるまでには何年もかかるだろう」とコメント。近いうちにFDAへの正式な通知も予定していると明かしました。
うま味と肉に似た食感が魅力
アミガサタケは日本ではあまりなじみがありませんが、欧州などでは人気のある食用キノコの一つ。比較的希少なため、野生のキノコの中では最も高価な部類に含まれます。
CellXはその菌糸体について、5%のタンパク質、25%の繊維質、必須のビタミンとミネラルを含み、うま味と素朴なナッツの風味、肉に似た食感を有していると説明。
これにヤマブシタケのパウダーとエンドウ豆タンパク質なども加えて、照り焼き、レモンペッパー、四川山椒風味の3種類のジャーキーに仕上げています。
「Mourish」ブランドの製品は、同社ウェブサイトとAmazonで購入が可能。年内にスーパーマーケットへの展開も見据えています。また、ほかの食品メーカーへの菌糸体の供給も検討中で、昨年からB2Bの機会を探り始めており、原料のテストを行っているパートナーが数社いるとのことです。
培養肉では技術のライセンス供与を狙う
培養肉の開発からスタートしたCellXは、2023年に菌糸体を用いたバイオマス発酵にも進出しました。同社のチームは当初、菌糸体を培養肉生産時の足場として使っていたものの、間もなく食材としての魅力に気付いたとのこと。
栄養的にも機能的にも優れ、動物食品のような風味を生み出せる菌糸体は、生産時の排出量を大幅に削減できるというメリットも持ち、代替プロテイン界を席巻する有望な原料となっています。
CellXは上海からサンフランシスコに本社を移転しており、菌糸体生産を12,000リットルの発酵タンクへと拡大。今後30,000リットル、120,000リットルへと順次拡張を予定しています。
今年はさらに、スナックや代替肉、プロテイン飲料まで、製品ラインアップの追加を検討中。当初ターゲットにしていた菌糸体と培養肉のハイブリッド製品については、消費者向けブランドの焦点からは外れているようです。
培養肉では、2,000リットルの生産が可能な中国最大のパイロットプラントを運営していますが、自社製品の販売は考えておらず、技術のライセンスにより収益を創出したい思惑。細胞株や培地、バイオプロセス、規制当局への認可申請サポートを提供することで、他企業のスケールアップを支援する計画です。
参考記事:
Exclusive: CellX Debuts World’s First Morel Mycelium Jerky with New US Brand Mourish
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