カナダのThe Better Butchers、世界初の培養肉専門精肉店の立ち上げ計画を発表

カナダの培養肉企業The Better Butchersが、今後2年以内に世界初の培養肉専門精肉店をオープンする計画を明らかにしました。

国内初の培養肉市販化を目指す


The Better Butchersは、米国の植物性代替肉ブランドThe Very Good Food Companyの共同創業者である、Mitchell Scottが立ち上げた新会社。Scottは、昨年The Very Good Food CompanyのCEOの職を不本意ながら解任されるという出来事の後、「世界初の培養肉専門店を始めるために新しくチームを作り上げた」と語っています。

同社は、2024年にバンクーバーに店舗をオープンする予定。現在はD2Cの製品ポートフォリオにも注力し、ポークソーセージ、ミートボール、マリネステーキの試作に取り組みながら、外食・小売りへの参入を計画しています。

カナダで初めて培養肉を市場投入する企業となるべく、同国の規制当局と前向きな話し合いを進めているといい、2024年第1四半期に試作品を完成させ、12カ月余りで規制当局からの認可取得を見込んでいます。

シンガポールのHuber’s Butcheryは昨年12月、同国で初めて販売認可を取得したGOOD Meatの培養チキンを採用し、店頭に並べています。The Better Butchersはこれに次いで、培養肉のみを扱う精肉店としては世界初となる見込みです。

カナダの規制プロセスについて


業界シンクタンクのThe Good Food Instituteによると、カナダは培養肉に対して新たな規制アプローチを検討する代わりに、現行の新規食品規制の枠組みの下で規制する意向を示しているとのこと*1

同国の認可には、製品に関する詳細な情報を記載した市販前提案書が必要。認可プロセスは、食品用途に用いることへの「異議なし」レター取得、新規動物飼料としての市販前評価(製品がその用途を意図しているかどうかにかかわらず)、そして環境評価という3つのステップで構成されます。

また、カナダの規制当局であるカナダ保健省(Health Canada)は、遺伝子組み換え食品の安全性評価に関して、オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)と連携。

一方の機関が主導する認可プロセスでもう一方がピアレビューを行うことで、プロセス全体を効率化しました。申請者と規制機関双方にとってのコストを削減するとともに、最終承認を出すにあたって規制当局の独立性を維持しています。

加熱するカナダの培養肉セクター


カナダにおいても、培養肉への関心は高まりを見せています。Canadian Food Innovation Network(以下、CFIN)とFiddlehead Technologiesが先日発表したレポートによると、カナダでは2020年以降、培養肉の技術に関する特許出願が22件あり、9社の企業が確認されているとのこと。

培養肉関連のメディアの報道もより積極的になってきており、検索数の増加が見られるなど消費者の注目度も高まっているといいます。

カナダは昨年、政府が出資する非営利団体のOntario Genomicsを通じて、培養肉の開発と商業化への投資を行いました。Ontario Genomicsは、ドイツのThe Cultivated Bと共同で、13万平方フィート(約12,000平方メートル)の広さを誇るバイオリアクター工場をオンタリオ州に開設、国内で供給を開始しています。

また、CFINと提携し、細胞培養産品プロジェクトを対象とした賞金90万カナダドル(約9,700万円)のコンペ「AcCELLerate-ON」を開催。昨年度は、CELL AG TECHEvolved Meatsなど4社が受賞しました。

さらに、細胞農業企業へ積極的な投資を行うCULT Food Science、アルバータ大学、New Harvest Canadaの戦略的パートナーシップから生まれた新たな研究機関、Institute of Cellular Agricultureも昨年設立されています。

*1 https://gfi.org/wp-content/uploads/2023/01/2022-Cultivated-Meat-State-of-the-Industry-Report-2-1.pdf

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