米Voyage Foodsがカーギルと提携、持続可能なカカオフリーチョコレートの拡販へ

米国・カリフォルニアに拠点を置く植物性食品メーカーVoyage Foodsが、食品コングロマリットのカーギルとの商業契約締結を発表しました。

世界各国に拠点を有する巨大企業との提携により、カカオフリーのチョコレートとナッツフリーのスプレッドの製造・販売を拡大させます。

アップサイクル原料を用いた代替チョコレート


米国最大の非上場企業であるカーギルは、今回の提携でカカオフリーチョコレートの市場に初進出することとなりました。

Voyage FoodsのB2B事業における独占的なグローバルディストリビューターとなり、スイーツの製品ポートフォリオを拡大。チョコレートの価格が高騰する中、多用途に使えるアレルゲンフリーで気候変動にも配慮した原材料を、食品メーカーに提供します。

Voyage Foodsは独自の技術で、ブドウの種、ヒマワリの種のタンパク質、RSPO認証を取得した持続可能なパーム油、シア核油をベースに、チョコレートを模した混合物を製造。そのほか、ナッツ不使用のピーナッツバターとヘーゼルナッツバターも展開しています。

カカオフリーチョコレートはB2B市場をターゲットにしていますが、ナッツフリーのスプレッドは1,400を超える小売店で販売されており、外食業界向けにビーンレスコーヒーの製造も手掛けています。

今年1月には2,200万ドル(約33億7,000万円)の資金調達を完了しており、この資金をもとに製造規模を拡大し、新製品を市場に投入する計画を示していました。

カーギルとの提携では、チョコレートとスプレッドがまず欧州で発売され、その後ほかの地域にも拡大される予定です。

気候フットプリント削減の一手に


カーギルは、ENOUGHUPSIDE FoodsAleph FarmsWildtypeなど、代替プロテイン業界の企業への豊富な投資実績があります。

しかしながら、環境保護を訴えるアドボカシーグループMighty Earthの会長で元米国下院議員のHenry Waxmanによると、米国における4大食肉企業の一角を占める同社は、森林破壊、汚染、気候変動、そして搾取を「競合他社を凌駕する規模で」推進しているといいます。2019年には「世界最悪の企業」という不名誉な称号も与えられていました。

カーギルは環境面の取り組みとして、北米の牛肉サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量を2030年までに30%削減する目標を設定。

同社の気候フットプリントがオランダ一国よりも大きい*1 ことを考えると、この目標達成は難しいのではという声も上がっていますが、「市場に登場した中で最も持続可能」といわれるチョコレートを手掛けるVoyage Foodsとの提携は、その一助となるはずです。

チョコレートと気候変動の密接な関係


切っても切れない関係にあるチョコレートと気候変動。カカオ生産は、牛肉を除いたどの食品よりも多くの排出*2 を生み出しており、その結果である異常気象によりカカオの木の3分の1が絶滅の危機に瀕し、供給を逼迫するという負のサイクルに陥っています。

世界的な需要の増加とも相まって、カカオ豆の価格は史上最高値に押し上げられ、先月1トンあたり1万ドル(約153万円)に達しました。

こうした状況から、WNWN Food Labs(英国)、ChoViva(ドイツ)、Foreverland(イタリア)などの開発する代替品の普及が強く求められています。

第三者機関が実施したライフサイクルアセスメントによると、Voyage Foodsのカカオフリーチョコレートはカーボンフットプリントを61〜67%削減できるとのこと。

世界のチョコレート生産の5%が代替チョコレートに切り替わったと仮定すると、年間約110〜150万台の自動車が排出するCO₂を削減できると試算されています。

また、水の消費に関しても、Voyage Foodsのチョコレートは従来品に比べ93〜95%削減。上記同様の仮定をすると、50mプール約50~120万杯分の水を節約できる計算です。

参考記事:
Cargill partners with Voyage Foods to scale up alternatives to cocoa-based products to meet consumers’ indulgence needs | Cargill
Voyage Foods Pens Deal with Cargill to Expand Cocoa-Free Chocolate & Nut-Free Spreads
*1 Three food companies with a climate footprint bigger than the Netherlands | Guardian sustainable business | The Guardian
*2 Carbon opportunity costs per kilogram of food | Our World in Data

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