イスラエルのKinoko-Tech、オーストラリア企業Metaphor Foodsとの提携で菌糸体由来製品を展開へ
イスラエルのKinoko-Techが、各種の菌糸体タンパク質製品をオーストラリアで商品化するため、Metaphor Foodsとの提携を発表しました。
来年の製品展開に向け、認可取得を進める
Kinoko-Techは、穀物、豆類、ナッツ類、そして食品産業の副産物(野菜の皮など)を餌に菌糸体を育て、代替肉や機能性食品のベースとして使用できるタンパク質原料に仕上げます。
ハンバーガーパティやソーセージなど、さまざまな形態の製品を実現でき、消費者需要の高まっているクリーンラベルを実現。一例として、同社のパティの成分リストは「黒レンズ豆、菌糸体、塩」や、「ひよこ豆、野菜の切り落とし(副産物)、菌糸体、香辛料」などとなっています。
2025年の製品展開に先立ち同社は、菌糸体タンパク質の大量生産とメーカーへの供給に関して、オーストラリアの原料メーカーHelaのアクセラレーター兼イノベーション部門であるMetaphor Foodsとの商業契約を締結しました。
今後はMetaphor Foodsが、メルボルンの工場で最終製品を製造する予定。来年オーストラリアで年間24~48トンの小規模生産をスタートさせ、パートナーシップが完全に確立され次第、年間700トン以上への拡大を目指します。
オーストラリアで成功を収めた後は、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ニュージーランドへの進出も計画。欧州や米国の食品メーカー数社とも話し合いを進めています。
菌株には遺伝子組み換えを行っておらず、食品用途で使用されてきた長い歴史があるため、規制対応が容易であることが強み。オーストラリアでは認可取得に向けて取り組んでいる最中ですが、欧州では新規食品(Novel Food)に該当せず、米国でもGRAS自己認証をすでに得ており販売が可能です。
廃棄物ゼロの固体発酵プラットフォーム
Kinoko-Techは、Jasmin Ravid(CEO)、Daria Feldman(CTO)、Hadar Shohat(COO)の3人が2019年に設立。エルサレム・ヘブライ大学の技術移転会社Yissumからライセンスを受けた固体発酵プロセスを活用しています。
この製法の魅力は、発酵プラットフォームに投入する原料と菌糸体がすべて製品の一部となるため、廃棄物を生み出さず、ほかの製造プロセスと比較して排出量も最小限に抑えられること。
パイロット工場のデータを用いて実施されたライフサイクルアセスメントでは、小規模の生産であっても、菌糸体タンパク質の温室効果ガス排出量はトマトの栽培よりも少ないことが判明しています。
一方、持続可能性よりも多くの消費者にとって重要な要素が「味」。Kinoko-Techが市場参入を目指しているオーストラリアでは、46%の人が植物性代替肉の風味に不満があるとしており、さらに30%の人が食感についても同じ感想を抱いています。
この点でも、菌糸体を用いた代替肉は、大豆をベースにした発酵食品であるテンペに似ていながら、それ以上のものを提供するとのこと。CEOのRavidは、「テンペとは全く異なるジューシーで繊維質の食感があり、味の面でもうま味とコクがより強い」と述べています。
栄養面でも、摂取が不足しがちな繊維質を多く含み、9種類の必須アミノ酸もすべて含んだ完全タンパク質。加えて前述した成分リストの短さも、過剰加工への不安を和らげるという意味で重要です。
参考記事:
Kinoko-Tech Inks Deal to Roll Out Fungi Products in Australia, From Zero-Waste Burgers to Mycelium Muesli Bars
Kinoko-Tech teams up with Hela to expand minimally processed, fungi-powered foods across APAC
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