オーストリアのFermifyが、米国で精密発酵カゼインのGRAS自己認証を取得

精密発酵で乳タンパク質の一種カゼインを開発するオーストリアのFermifyが、米国食品医薬品局(以下、FDA)の要求に従った包括的な安全性試験を行い、GRAS(Generally Recognized as Safe)自己認証を取得したと発表しました。

米国内での販売が可能に、カゼインでは2社目


GRASステータスの取得は、Fermifyの製品の品質と安全性を証明し、米国市場での販売を可能にするもの。同社はFDAへの正式な通知も実施済みで、FDAのレビューを経て「No questions(異議なし)」レターを受領すれば、より透明性の高い認証が得られます。

2021年11月、Eva Sommer(CEO)とChristoph Herwigがウィーンに設立した同社は、業界に先駆けて精密発酵によるカゼインの連続生産に成功。

同社のβ-カゼインは純度94%で、動物性タンパク質に匹敵する機能性(味、溶融性、構造)を有しているといい、すでにパイロットスケールでの試験生産を達成し、液状サンプルの提供を開始しています。

昨年シードラウンドで500万ドル(約7億4,900万円)調達しましたが、その後さらに延長。乳業メーカーのCREMERInterfoodと協力して、チーズやクリーム、飲料などさまざまな乳製品における精密発酵カゼインの機能性テストを行ってきました。

人体への安全性が確認されたことで、今後は実際の消費者で官能評価を行うことも可能になります。

精密発酵乳タンパク質へのFDA認可が急増


2027年にウシ由来のカゼインと同等の価格で提供することを目指すFermifyは、独自の連続生産プロセスを開発。バッチ式の発酵生産に比べてコストを50%削減し、「フェドバッチ式*16倍」にも達するという生産性を実現しました。

持続可能性の観点からも優れており、従来のチーズ製造と比較して、CO₂排出を85%、水使用量を75%、土地利用を98%削減できるといいます。

精密発酵による乳タンパク質へのFDA認可は今年急増し、カゼインを開発するNew Culture(米国)、ホエイを開発するRemilk(イスラエル)、Vivici(オランダ)、21st.BIO(デンマーク)、ラクトフェリンを開発するTurtleTree(シンガポール)に続くもの。

CEOのSommerによると、FDAは提出書類の作成に非常に協力的で、「FDAの専門家との事前相談で生産プロセスや製品仕様について話し合うことができ、生産技術の評価に非常に役立った」とのことです。

カゼインで認可の下りたものは今回で2例目ですが、Formo(ドイツ)、Those Vegan Cowboys(ベルギー)、Standing Ovation(フランス)、Fooditive Group(オランダ)などが米国での市場化を見据えており、今後の認可事例の増加に期待がかかります。

* 培養途中で栄養分を添加して、栄養を枯渇させずに細胞を増殖させる手法。流加培養とも。

参考記事:Fermify Secures US GRAS Status for Fermented Casein, Animal-Free Dairy Tastings on Horizon

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