60万リットルの精密発酵施設の建設を進める米Liberation Labs、Agronomicsなどから約19億円を調達

米国のバイオテクノロジー企業Liberation Labsが、大規模な生産施設の建設に充てる1,250万ドル(約19億1,000万円)の資金調達を完了させました。

精密発酵タンパク質の生産が行える施設の需要増に対応し、インディアナ州リッチモンドで進行中の工場建設を進めます。

2025年初頭の工場開設へ


今回のラウンドでは、既存投資家のSiddhi Capitalからの追加資金に加え、フードテック専門ベンチャーキャピタルの英Agronomicsが1,000万ドル(約15億3,000万円)を出資。細胞農業界の企業に数多く投資を行っているAgronomicsは、Liberation Labsの株式の37.5%を保有することとなりました。

2022年に設立されたLiberation Labsは、これまでに累計9,750万ドル(約150億円)を調達し、別で総額5,500万ドル(約84億1,000万円)の融資を確保。さらに、今後シリーズAラウンドでの調達も見込んでおり、無事完了すれば、リッチモンドに建設中の工場を2025年第1四半期までに稼動開始させられる計画です。

この新工場は、容量60万リットル年間600〜1,200トンのタンパク質生産能力を有するもので、同社では年間4,000万ドル(約61億2,000万円)の収益をもたらすと予測。

精密発酵業界全体で課題となっている生産能力のボトルネックに対処し、精密発酵を手掛けるスタートアップ企業から、中堅・大手の原料・消費財メーカーまで、さまざまな顧客の生産をサポートする予定です。

建設地にリッチモンドを選んだ理由としては、発酵に必要な糖の調達、光熱費、比較的安価で豊富な労働力、規制環境、政府による優遇措置の存在など。

Agronomicsの会長を務めるJim Mellomも、「Liberation Labsは当社のポートフォリオで初めてキャッシュを生み出す企業になると確信している」と信頼を寄せています。

急速な進展を見せる精密発酵業界の動向


今年に入って、特に米国では精密発酵製品の発売、資金調達、規制認可などが相次ぎ、業界は急速な進展を見せています。

2月には、世界最大規模の食品メーカー2社が立て続けに新製品を発表しました。ネスレは精密発酵乳清(ホエイ)タンパク質を使用したアニマルフリーのプロテインパウダー「Better Whey」を限定発売。

ユニリーバは、Perfect Dayの精密発酵ホエイを「Breyers」ブランドのチョコレートアイスに使用しました。Perfect Day自身も、1月に行われたシリーズAラウンドで9,000万ドル(約138億円)という巨額調達に成功しています。

規制面では、ViviciのホエイがGRAS自己認証を取得、New Cultureもカゼインで初の認証を取得し、販売が可能となりました。ImagindairyのホエイとOobliのブラゼインは、米国食品医薬品局(FDA)から「異議なし」のレターを受け取っています。

インディアナ州に隣接するイリノイ州では、精密発酵に重点を置いたバイオものづくりのハブに6億8,000万ドル(約1,040億円)もの投資がなされ、Liberation Labsと同じく企業のスケールアップ支援に向けた取り組みが進められています。

参考記事:
Liberation Labs Raises Further $12.5M to Support Construction of Precision Fermentation Facility
Agronomics Invests $10M in Liberation Labs to Advance its 600,000 L Precision Fermentation Facility
Liberation Labs Breaks Ground on its First Purpose-Built Precision Fermentation Biomanufacturing Facility

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