林業の副産物を高付加価値の食品原料に変えるCirkulärが、水産養殖用のマイコプロテインを市販化

スウェーデンのバイオマス発酵スタートアップCirkulärが、林業由来の副産物を用いて作られたタンパク質原料「Mycomeal」を発売。水産養殖用のマイコプロテインを世界で初めて商業化した企業となりました。
事業拡大のため、政府系研究機関のFormasから22万6,000ユーロ(約4,100万円)の助成金も獲得しています。
マイコプロテインで育った「未来の魚」
Cirkulärは2019年、オーツミルクの発明者であり後にOatlyを創業したRickard Östeの息子、Eric Östeによってスウェーデン南部のルンドで設立されました。MBP Solutionsをはじめ、投資家セクターの著名人から出資を受けています。
同社初の製品「Mycomeal」は、林業由来の副産物を餌に糸状菌を発酵させて得られるマイコプロテインで、水産養殖における魚の飼料として用いられる輸入大豆や魚粉への依存度を低減する設計が特徴。
この原料を主に食べて育ったニジマスが「Framtidens Fisk(未来の魚)」としてすでに製品化されており、数量限定だったようで先日完売したとのことです。
同社は今後、新たな資金を活用して養殖飼料原料にとどまらない追加製品の創出に向けた糸状菌の応用を研究する計画。目標は、単一のバイオプロセスから複数の商業化可能なアウトプットを生み出す、統合型菌類バイオリファイナリー(精製所)の実現です。
CEOのEric Östeは、このプロジェクトは同社の長期的なビジョンにおける戦略的拡大を体現するものとコメント。「既存の副産物を有効活用するだけでどれほどの価値が創出できるかを実証するプロジェクトとして、養殖飼料以外の高付加価値化合物についても評価し、最も大きなインパクトを発揮する領域を特定したい」と語っています。
4つの新たな製品群の可能性を評価
ボロース大学などとの提携で推進されるプロジェクトでは具体的に、同一の菌類バイオマスから新たに生産可能な4つの製品群を評価する予定。
幅広い食品・飼料用途向けのタンパク質分離物、食品・飲料・化粧品向け天然食物繊維としてのキチン-グルカン複合体(CGC)、生分解性包装材・創傷被覆材・水処理用途向けのキトサン、そして動物栄養・機能性食品向け免疫サポート成分としてのβ-グルカンが検討されています。
Cirkulärによると、特に菌類由来のキトサンは、業界標準である甲殻類由来のキトサンと比較して環境面で優位性があるとのこと。すでに確立している循環型の生産システムを基盤とし、価値の低い副産物を、高い機能性と持続可能性の利点を備えた原料へと転換する狙いです。
初期の試験はCirkulärが保有する実証施設で実施され、各候補原料の小ロット生産による性能試験と市場評価を行う計画。同社が単一製品からの多角化を図り、原料サプライヤーへと移行する足掛かりを築きます。
近年、バイオマス発酵分野では副産物の活用を進める企業が多く見受けられますが、同じ林業副産物を用いた事例では隣国フィンランドのEniferが挙げられ、欧米での販売認可取得を進めるとともに、建設を進めている年間最大3,000トンの生産能力を持った大型工場の稼働開始に向けて動いています。
参考記事:
Cirkulär | LinkedIn
World’s First Fish Fed with Mycoprotein – Sweden Leads the Way in Circular Feed – Axfoundation
Biotech Startup Cirkulär Makes History: First Fish Fed on Mycoprotein Hits the Market, Paving the Way for Circular Aquaculture – Øresund Startups
Cirkulär awarded € 226 000 to upcycle forest-based industry waste streams into multiple high-value products
Sweden’s Cirkulär receives funding to upscale forest-based industry waste – Sustainability Online


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