ビール酵母の再利用で得られたバクテリアセルロースを用いて、培養肉生産用の足場を作製 —英・UCLの研究チーム

英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームが、ビール醸造で残った酵母を活用して、培養肉用の安価な可食性足場を作り出す方法を考案。新規タンパク質の規模拡大と商業化を阻んできた障壁を取り除く可能性を示しました。

この研究成果は、『Frontiers in Nutrition』誌に掲載されています。

コストと環境負荷を大幅に削減


構造化された肉や厚みのある肉塊を人工的に作るのに有効な方法として、細胞を足場上で培養することは一般的に行われてきました。これにより細胞の付着、分化、成長を促進できますが、大量生産する食品ではコストがかかりすぎるのが問題となります。

UCLのチームは、通常廃棄される醸造後のビール酵母を再利用して得られたバクテリアセルロースを用いて、足場に適した特性を持つ構造体を作製。論文著者の1人で医学部教授のRichard Dayは、「培養肉生産のコストと環境負荷を大幅に削減できる可能性がある」としています。

植物由来のセルロースは頑丈な細胞壁を主成分として支える物質ですが、バクテリアセルロースも同様に、微生物が細胞周囲に保護層を形成するために作り出すものです。

バクテリアセルロースは以前から、発酵させたココナッツ果汁をベースとするゼリー状のデザート、ナタデココの製造に使われてきました。近年では、素材の培養技術が向上したことで、3Dプリント包帯から植物性食品に至るまで幅広く応用できるようになってきています。

膨大な量の廃棄物を資源として活用


UCLの研究チームは、まず近隣のビール会社から使用済み酵母を回収し、高品質なセルロースを生成することで知られる酢酸菌の一種(Komagataeibacter xylinus)の培養における栄養源として利用しました。

生成されたバクテリアセルロースの構造的・機械的特性を試験したところ、従来の栄養培地代わりにビール酵母を使用した場合はより肉に近い食感が生まれ、標準的なセルロースに比べて硬さおよび弾力が低いと判明。

さらに、このバクテリアセルロースを可食性の足場としてマウスの線維芽細胞を播種したところ、細胞の付着が見られ、培養肉生産のための細胞増殖を支えられることが示されました。

研究チームは、本プロジェクトはまだ初期段階にあり、さらなる研究が必要と強調。筋細胞や脂肪細胞など、肉に含まれるほかの細胞腫で試験し、異なる種類のビールから得られた使用済み酵母を用いてセルロース収量と足場の質の評価を行って、引き続きこの手法の開発を進める計画です。

筆頭著者のChristian Harrisonによると、今回回収したビール酵母は比較的少量だったものの、醸造由来の廃棄物は年間で膨大な量が排出されていて、貴重な資源として利用できる可能性を秘めているとのこと。

これを活用して持続可能なタンパク質へとアップサイクルする試みは増加しており、シンガポール・南洋理工大学のチームは以前、ビール製造の後に残った穀物に含まれるタンパク質の80%以上を抽出する手法を開発。

スタートアップ企業の中では欧州に目立った企業が多く、ProteinDistillery(ドイツ)、Yeastup(スイス)、Revyve(オランダ)、Yeasty(フランス)などが食品・飼料用途の原料生産に使用しています。

参考記事:
From pint to plate: scientists brew up a new way to grow meat | UCL News – UCL – University College London
Pint to Protein: Scientists Tap Beer Waste to Grow Cultivated Meat

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