45日で生分解される菌糸体製の棺が北米に初上陸、「グリーン葬」の新時代を築く

オランダ企業Loop Biotechの開発した菌糸体製の棺が、米国でデビューを果たしました。自然の素材を活用して環境負荷を低減する「グリーン葬」の普及が進んでいます。
欧州で2,500件の葬儀に採用
菌糸体(糸状菌が地中に伸ばす根のような構造)をベースに作られた地球に優しい棺「Loop Living Cocoon」が北米で初めて実用化されたのは、メイン州の田舎の豊かな自然に囲まれた丘陵地。アーティストのMarsya Anckerが父親を埋葬するのに使用しました。
「父はいつも、自分が愛した土地の林に埋葬されたいと言っていた。Living Cocoonは、父が好きだった多年草の植物と共に庭を作るのにうってつけだ」とAnckerは語っています。
この棺は2020年創業のスタートアップ企業Loop Biotechが開発したもので、同年にオランダで初めて葬儀に使用されて注目を集めました。以来、ヨーロッパ中で2,500件を超える埋葬に採用されています。
棺は、デルフトの工場で地元のキノコ種とアップサイクルした麻の繊維から作られ、内側にはベッドと枕代わりの柔らかなコケが敷き詰められているとのこと。このコケはオプションでウールや麻、バイオベースのコットンにも交換可能です。
死後も地球に良い影響を与える

遺体を入れた棺が埋葬されると生分解が始まり、わずか45日でまず棺が土壌に吸収され、その後2~3年かけて内側の遺体が分解。
木材や金属を含む伝統的な棺桶では生分解に10年以上かかるのに比べ、圧倒的なスピードで自然に還ります。
菌糸体は土壌に栄養分を供給し、生物多様性の向上に寄与。遺体も植物の栄養分として新たな生命を育て、死後も地球に良い影響を与えることが可能です。
Loop Biotechの共同創業者Bob Hendrikxは、「人間が死後にも自然を豊かにできるよう、Living Cocoonを考案した。これは、私たちが受け継いだ世界よりも良い状態で後世に残すことにつながる」と説明。「葬儀は終わりではなく、始まりとなることもある」と述べています。
棺桶のほか、同社は同じく菌糸体で作られた葬儀用運搬台「Loop ForestBed」と、骨壷「Loop EarthRise」も取り扱っています。
欧米で高まるグリーン葬への関心
葬儀は昔から、環境に優しいものではありませんでした。非営利団体のGreen Burial Councilによると、一般的な火葬場では、1回の火葬ごとに160~190kgのCO₂が大気中に排出されるとのこと。
一方、欧米で伝統的に行われる土葬では、米国だけで年間約16,000立方メートルの防腐処理剤、約47,000立方メートルの堅木(広葉樹の木材)、約145万トンの鉄筋コンクリートが使用されているといいます。
米国では近年グリーン葬の件数が増加傾向にあり、米国葬儀業協会(NFDA)の調査によると、グリーン葬に関心のある米国人の割合は、2021年の56%から2024年には68%に増加しています。
Green Burial Councilでは、20年間の活動期間で400以上のグリーン葬儀場、250を超えるグリーン葬サービス提供者に認定を与えてきました。同団体のEmily Millerは、「伝統的な土葬や火葬の環境影響に対する認識が高まるにつれ、意味のある持続可能な代替手段への需要が増加している」と述べています。
グリーン葬の拡大に取り組むその他の企業には、遺体を土に還す葬儀サービスを提供するRecompose、竹製の棺桶や、海葬用にウミガメや貝殻の形をした生分解性骨壷を販売するPassages Internationalなどがあります。
参考記事:
Loop Biotech | LinkedIn
New Era for Green Burials? Mycelium Caskets Make US Debut in Maine Funeral
‘His little cocoon in the woods’ — Maine man laid to rest in mushroom casket | Maine Public
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