フィンランド・VTTの研究チームが、液体発酵により菌糸体レザーを大量生産する新手法を開発

VTTフィンランド技術研究センター(VTT Technical Research Centre of Finland)のチームが、パルプをベースとした手法で菌糸体レザーを製造する新技術を開発。
環境に配慮したバイオ素材の大量生産を可能にするとともに、実際にその素材を使ってハンドバッグを製作しました。
固体発酵による従来の手法を改良
キノコが持つ根のような構造体、菌糸体を用いた素材は、化石燃料由来や動物由来の素材に代わるものとして注目を集めていますが、規模拡大が依然として難しく、これまではファッションや自動車業界におけるごく小規模な採用にとどまってきました。
VTTのチームは、フィンランド経済・雇用省傘下の組織Business Finlandと、科学研究への資金提供を行うフィンランド研究評議会(RCF)の支援を受けて、この問題への取り組みに着手。学術誌『ACS Applied Bio Materials』に掲載された論文で、解決策を打ち出しました。

菌糸体素材の多くは通常、トレイの上で菌類を増殖させ、糸状の繊維が互いに絡み合って強固なシート状になるまで成長させることで作られます。
この手法は有効ではあるものの大量生産には不向きだというVTTの研究者らは、糸状菌の一種で、精密発酵でもよく使われるトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)を栄養豊富な液体に浸し、ビールの醸造と似た発酵タンクの中で培養する手法を採りました。
シート状に成形する従来の方法とは異なり、液体中での発酵プロセスでは、菌類は厚みのあるパルプ状の塊に成長します。
研究チームはこの塊を回収・洗浄した後、素材の柔軟性と強度を高めるため、ソルビトール(食品や化粧品分野で一般的な天然の糖アルコール)とセルロース(植物の細胞壁の主要な構成成分)を混合しました。
その混合物を薄いシート状に広げて乾燥させることで、ようやくレザーに似た不織布が完成。チームはさらに、製紙工程で使われるようなローラーシステムを用いて菌糸体シートを連続生産し、ハンドバッグの試作品を製作しています。
優れた耐久性を持ちつつ、堆肥化も可能に

試験の結果、ローラーで成形された菌糸体素材は、従来のレザーに匹敵する引張強度を備えていることが確認されました。
一般消費者に提供するには、引き裂きに対する耐性をさらに向上させる必要がありますが、この製造プロセスはバイオテクノロジーや印刷業界ですでに普及している設備を利用できるという点で有望だとされています。
菌糸体素材はまた、水中で28日以内に分解され、工業用堆肥化の条件下では約6週間で完全に分解されると判明しました。
研究チームは、従来のトレイを用いる方法とは異なり、パルプベースの製造プロセスでは最終的な素材の特性をより細かく制御できると指摘。色や質感の付与、綿布への積層(ラミネート)といった加工も可能になります。
菌糸体レザーの開発に取り組んでいるのはスタートアップ企業が中心で、米国のEcovative、MycoWorks、Mushmycelなどがその代表例。
イタリアの高級ファッションブランド、ボッテガ・ヴェネタは、2026-27年秋冬コレクションの一部として地元のスタートアップ企業と提携し、菌糸体素材「Ephea」を使用したスモールグッズ・コレクションを発表しています。
参考記事:
Finnish Govt-Backed Project Creates New Way to Make Large Amounts of Mycelium Leather
Mushroom leather production gets major upgrade


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