【2026年版】植物性食品業界の現状まとめ —GFIレポート

米国の非営利シンクタンクThe Good Food Institute(以下、GFI)が、代替プロテイン業界の現状をまとめた2026年版レポートを発行しました。
各セクターの商業的状況、投資動向、技術革新、政府と規制の動向に関する分析を提供するレポートの全文は、こちら(🔗GFIウェブサイト)から閲覧可能。
本記事では、植物性食品についての部分の記載をベースに独自調査の内容も加え、2025年の動向と2026年以降の展望をまとめています。
売り上げは前年から微増、従来品との価格差解消の成果も

2025年、世界全体で植物由来の代替肉、シーフード、ミルク、ヨーグルト、アイスクリーム、チーズの小売総売上高は、前年比3%増の289億ドル(約4兆6,000億円)に達しました(卵については報告なし、増加幅はインフレ率調整後)。
販売量も世界全体で3%増加し、販売量の増加が全体の売り上げを牽引しています。
製品カテゴリー別で見ると、代替肉の売り上げが欧州と北米に集中しているのに対して、代替乳製品はアジア太平洋地域が全体の3分の1以上を占め最多でした。
最も売上高の大きかったカテゴリーは植物性ミルクで、182億ドル(約2兆8,900億円)を記録しています。
最大市場の米国では、植物性食品の市場規模は80億ドル(約1兆2,700億円)となっており、8年前から倍増していますが、2022年の85億ドル(約1兆3,500億円)以降は微減を続けています。
インフレと関税の影響から、消費者が食料品価格に対する不満を強めた一方で、いくつかのカテゴリーでは動物由来製品との価格差が縮まりました。これは特に牛肉において顕著で、2024年に牛肉を模した植物由来の製品は従来品よりも14%割高でしたが、現在は8%に下がっています。
米国の小売市場における植物性代替肉・シーフードの売上高は、前年から10%減少しました。ただし、フレーバー付き製品(アジア⾵やメキシコ⾵)や、シュレッド(細切り)、チャンク(塊)など植物由来ではこれまで難しかった製品形態の売れ⾏きが好調で、消費者の心をつかんでいます。
そのほか、植物由来のプロテインパウダーとドリンク、コーヒークリーマー、プロテインバー、豆腐、テンペ、セイタン(グルテンミート)、焼き菓子を含むデザート類はすべて成長しています。
一方、米国の外食市場では、ポークソーセージやチキンナゲットの代替品が成長したほか、植物性ミルクも著しい伸びを見せました。これは、スターバックスやダンキンドーナツなどの大手事業者が代替ミルクへの追加料⾦を撤廃し、価格差を解消したことが⼀因と考えられます。
活発化する政府投資、EUの表示論争は悪い方向へ

植物性食品セクターへの民間投資はやや回復した程度でしたが、フランス、カナダ、中国、インドなどの政府は、国家政策に沿って同分野の研究プログラムに積極的に公的資金を投入しています。
欧州では、欧州投資銀行(EIB)が大規模な融資を実施したほか、ベルギーやオランダが食生活ガイドラインを改定し、動物性タンパク質を減らして植物性タンパク質を多く摂取するよう国民に呼びかけました。
一方で、この動きに逆行する米国は、連邦政府の資金や国立科学財団(NSF)が新規に交付する助成金を削減。その結果、2021〜24年にかけて一貫して増加していた研究開発への投資が、減少に転じました。2026年には、世界最大の研究開発資金の提供国としての地位を中国に奪われると、GFIは予想しています。
また、規制面での大きな動きとして、欧州連合(EU)の政策立案者は2026年3月、ヴィーガン製品のラベル表示とマーケティングに「ビーフ」「チキン」「ステーキ」「ベーコン」など31種類の名称の使用を禁止することで合意しました。
個別の国レベルでは、ドイツのように禁止措置に反対する国もあり、消費者からも疑問の声が挙がっているものの、大きな影響力を持つ畜産業界のロビー活動が功を奏した様子。欧州議会での最終採決を経て成立となれば、3年間の移行期間後に施行されます。
大企業からスタートアップまで、多数の製品展開が実現

大企業による関与は昨年も継続し、スウェーデンの家具メーカー、イケアは英国の植物性代替肉ブランドTHISの製品をレストランで提供開始。さらに、植物性ミルクを手掛けるThe Green Dairyの株式の過半数を取得しました。
テトラパックはヒマワリ由来のタンパク質製品を発売。クラフト・ハインツもオーツミルクが原料のプリンを発売し、植物性デザートに参入しました。
製薬大手のノボ ノルディスクは、人工知能(AI)を活用して加工度の低い植物性代替肉を作るプロジェクトに約10億円を拠出しています。
米国では、Eat Justの植物性チキンや、ピーカンナッツを原料とするPecanaの代替ミルクが、ウォルマートの店舗に進出。フィリピンでもセブン-イレブンがGreen Rebel Foodsと提携して、全国の2,000店舗にプラントベース製品を導入しました。
調達環境の変化に伴う合併・買収の動きも多く見られ、オランダの鶏肉大手Plukonは、代替肉を手掛ける地元のスタートアップ企業Vega Insidersを買収。
ダノンは、植物由来の子供向け栄養製品を製造するKate Farmsの買収で合意しています。米国の乳製品大手Chobaniは、植物性スムージーなどを展開し、2021年にユニコーン企業の仲間入りも果たしていたDaily Harvestを買収しました。
スタートアップ企業の主立った動きとしては、植物性チーズを開発するイタリアのDreamfarmが、欧州内での展開を拡大しました。フランスの代替肉メーカーNxtfoodは、売り上げの大幅な増加を受けて90億円超の巨額調達に成功。
ドイツのVeganz Groupは、2Dプリントしたシート状オーツミルクを米国で展開開始しています。Steakholder Foodsは、3Dプリントした代替魚製品をイスラエルの小売店に投入。スロベニアのJuicy Marblesは、タンパク質と繊維質を豊富に含んだリアルな霜降りラム肉を発売しました。
また、日本でもAtomo Coffeeの提供が始まり話題を呼んだ代替コーヒーや、代替チョコレートの分野が沸騰中。原料大手のCSM Ingredientsはキャロブ(イナゴマメ)をベースにした代替カカオ製品を発売し、チョコレート供給の世界大手バリーカレボーも、従来のチョコレートを補完する選択肢を模索してドイツのPlanet A Foodsと提携しています。
健康面の利点から関心が増加、味とコストの改善が普及の鍵に

米国では、成⼈の半数以上が植物性食品に興味を持っており、年間を通じて複数回購入する人の割合も前年比で比較的安定しています。
依然として最大のカテゴリーである植物性ミルクは昨年、小売りでは動物性も含めたミルク総売上高の約13%を占めていました。
代替肉に関する調査では、消費者の40%が植物由来の製品を食べていましたが、その大半は従来の肉も購入しており、ヴィーガンやベジタリアンではない通常の買い物客が業界にとって重要なターゲットであると示唆されています。
また、GFIが昨年実施した調査では、植物性代替⾁の価値提案において、「健康」がキーワードとなることが確認されました。多くの消費者は植物性代替⾁のもたらす健康上のメリットを認識しているといい、さらに受容度を高めるためには主要栄養素(タンパク質や⾷物繊維)の含有量についての情報伝達、原材料リストの短縮、ホルモン剤や抗生物質不使用といった従来の⾁とは異なる利点の強調が有効と指摘されています。
過去に植物性代替肉を試した経験があるものの、購入をやめてしまった消費者は、味と食感の改善、そしてコストの低下が実現すれば、再度購入するようになる可能性があるとのことです。
欧州では、2大市場であるドイツと英国で、フレキシタリアンの食習慣が広く浸透。両国の成人の半数(51%)が肉や乳製品の摂取量を積極的に減らし、植物性⾷品の消費量を増やしたいと考えています。
その動機としては、環境問題や動物福祉に対する関心に加えて、ダイエット目的での食生活の転換、筋⾁増強やタンパク質摂取量の増加が挙げられています。
ドイツのスーパーでは、動物性食品よりも安価な選択肢として植物性食品が台頭しつつあり、肉と乳製品の消費量が過去最低を記録しました。
一方、アジア太平洋では植物性タンパク質を受け入れる文化的な土壌が整っているものの、PwCの調査では、肉やシーフードの消費量を増やしたい意向の人が、減らしたい人よりも多いとの結果でした。市場規模が大きく多様性に富んでいるため、戦略のさらなる検討が必要ですが、全体としてはイノベーションを生み出す強力なエコシステムがあるとして、成長の機会が示されています。
クリーンラベル製品を実現するさまざまな技術が登場

近年、食品への人工的な添加物を排除する動きと相まって、植物性代替肉の加工度の高さが取り上げられ、「超加工食品(UPF)」と呼ばれて避けられるようになってきました。
植物性食品メーカーがクリーンラベルやホールフード需要への対応を迫られる中、食感改良や乳化の機能を備え、ゲル化剤や結合剤の使⽤を代替または削減するタンパク質原料が開発されています。
米国のShiruは、ジャガイモをベースにした天然のオレオゲル構造体を「uPro」として製品化。イスラエルのMeala FoodTechは、エンドウ豆タンパク質のみから作られる代替卵パウダーを発売しました。
オランダ企業MaGie Creationsは、ビール醸造の副産物として出るビール粕をアップサイクルした、世界初の乳化剤を発表しています。
また、スペインのNovameatは、独自のマイクロ押出成形技術を活用した、クリーンラベルのプルドポークとラムを発売。オランダのRival Foodsは、最小限の加工で食感とタンパク質含有量を最大限に引き出す「シアーセル」技術を強みに、資金調達を行いました。
新規原料としては、ウキクサなどから抽出されるRuBisCO(ルビスコ)タンパク質が引き続き注目を浴び、ニュージーランドのLeaft Foodsが世界初となる消費者向けの製品化を実現。さらに日本の乳業大手ラクト・ジャパンと提携して、原料供給を拡大しました。Plantible Foodsは、米国でルビスコを抽出する大規模施設の本格稼動をスタートさせています。
この原料の魅力は、その豊富さと、地理的に分散した大規模生産を行える可能性。技術面や規制面での課題が残っているとはいえ、⻑期的にはよりレジリエントで安定したサプライチェーンを⽀えることができると期待されています。
2026年以降の予測と総括
GFIは、消費者の購買意欲を加速させるイノベーションと投資は、依然として必須事項と強調。
2025年には、次世代タンパク質インフラへの⻑期投資が継続していることを示す施設が開設され、大⼿ブランドや小売業者の製品イノベーションが際立ち、企業は植物性代替⾁の味、⾷感、栄養プロファイルを改善するための配合の見直しに投資しました。
厳しい資金調達環境、一部での売り上げ減少、消費者の選択肢を狭めるような規制上の障害にもかかわらず、タンパク質摂取に注⽬が集まったトレンドにも後押しされて、コストと生産効率の改善による前進が見られています。
2015年以降、世界の植物性代替⾁・シーフードの小売市場は3倍に拡大しましたが、巨大な⾷⾁市場の中ではごく一部を占めるに過ぎません。
それでも、10%ほどの市場シェアを獲得すれば、数千万台の⾃動⾞を道路からなくすのと同等の気候変動緩和効果があると予測されているように、植物性食品はヒトと地球の健康を守る上で大きな役割を果たせると期待されています。
その道筋においては、いくつかの要素が必要になるとGFIは予測。世界各国の政府による公的投資の拡大、消費者自身の選択を尊重し、植物性⾷品へのより自由な表示を認める政策の強化、原材料や配合に関するデータのオープンアクセス化、そして動物性製品を使わずに風味豊かな商品を開発する大⼿企業の積極的な取り組みなどが挙げられています。


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