イスラエルのEver After Foods、培養肉の生産コストを90%低減するプラットフォーム構築に向け約15.8億円を調達

イスラエルの培養肉企業Ever After Foodsが、同国の食品最大手Tnuvaと細胞農業を手掛けるPluriのほか、米国・EUの戦略的投資家から合計1,000万ドル(約15億8,000万円)の調達に成功したと発表しました。

B2Bで技術提供を行うイネーブラーに


2022年にPluriTnuvaの合弁会社として立ち上げられたEver After Foodsは、Pluriの保有する技術と知的財産についてライセンスを受け、培養肉の開発、生産、商品化に向けた取り組みを進めています。

新たな資本を得て、同社は技術プラットフォームを発展させ、ほかの培養肉企業に技術提供を行う「イネーブラー」としての地位を確立する狙い。

Pluriは立ち上げ以来2度目となる今回の新たな投資に伴い、同社に付与するライセンスをシーフードにまで拡大しました。

Pluriの社長兼CEOを務めるYaky Yanayは、「この子会社は当社の革新的な3D細胞培養技術を活用し、わずか2年で培養肉セクターに変革をもたらした。このたびの投資は、同社への継続的なコミットメントを示すものだ」とコメント。

Tnuvaの会長Haim Gavrieliは、「世界が食肉を生産し消費する方法は今後10年間で大きく変化し、培養肉プレーヤーに多くの機会をもたらすだろう。イスラエルを代表する代替プロテイン企業として、イスラエルのフードテック全般、とりわけ培養肉セクターへの継続的な投資の重要性を認識している」と語っています。

低コストの培養肉生産を実現


Ever After Foodsは昨年、35リットルのバイオリアクターで10kgの塊肉を培養できるパイロット生産用プラットフォームを発表

このバイオリアクターでは、標準的な技術と比較して、各細胞から得られるタンパク質が最大6倍、脂質では700倍にも増加するといいます。

比類のない効率性により、メーカーは生産性を大幅に向上させながら、生産コストを90%以上削減できるとのこと。

B2Bの事業モデルに取り組んで1年、迅速な進歩を遂げた同社は、異なる動物細胞から筋組織と脂肪組織を培養し、従来の肉と同じ味や食感を持った製品を生み出すプラットフォームの能力を実証できたと報告しています。

培養肉生産の課題に対するイスラエル企業の対応


培養肉産業の発展において最も差し迫った課題となっている、スケーラビリティ向上とコスト削減。

この状況はイスラエルにおいても同じであり、GFI IsraelAlla Voldmanは同国のスタートアップ企業の動向に関して、「スケーラビリティの障害を克服する目的でB2Bソリューションに重点を置く傾向が見られる」と『Green Queen』に語っています。

同時にイスラエルでは、伝統的に製薬会社にサービスを提供してきたCDMO(開発製造受託)企業が、培養肉セクターに進出し始めているとのこと。

コスト問題への対応としては、政府機関のイスラエル・イノベーション庁(Innovation Authority)が2022年、14の企業と10の学術機関からなる研究コンソーシアムを設立し、1,800万ドル(約28億5,000万円)を投じて、培養肉を生産するコスト効率に優れた手法の探求に乗り出しました。

同国は、フードテックを5つの優先研究開発分野に含めており、過去10年間のベンチャーキャピタル資金の10%(約1,900億円)を代替プロテイン分野に集めています。

今年1月には、地元企業Aleph Farmsの培養牛肉について安全性を正式に認め、シンガポールと米国に次いで、培養肉の販売を承認した国の一つとなりました。

培養肉産業は、2030年までに200以上の企業と12以上の生産施設で1万の追加雇用(うち3分の1は製造業)を生み、輸出や賃金支払い、法人税を通じてイスラエル経済に25億ドル(約3,960億円)貢献すると予想されています。

参考記事:
Ever After Foods Raises $10M for “Unmatched” Cost-Effective Bioreactor Platform for Cultivated Meat Producers
Ever After Foods Raises $10M for Scale-Up Platform That Make Cultivated Meat 90% Cheaper
In Israel, Alternative Proteins Could Create 10,000 Jobs & Contribute $2.5B by 2030: Report

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